「透析が必要」と言われたときに、患者さんが不安に感じていること
腎臓の悪い方が、医師から「透析をしなければなりません」と言われたとき、頭が真っ白になった、というお話をよく聞きます。患者さんにとって、透析は人生の中でも、とても大きな出来事です。
NPO法人腎臓サポート協会では、「透析が必要と言われたとき、どのような不安を感じたか」について、患者さんへのアンケート調査を行っています。その結果を、以下に示します。
出展:NPO 法人腎臓サポート協会 2019 年会員アンケート結果
ここでは、透析医として関わってきた経験から、血液透析を開始する場合に多くみられる不安について、私なりに書いてみたいと思います。
すべての患者さんに当てはまるわけではありませんし、状況は人それぞれです。少しでも参考になれば幸いです。
日常生活や趣味について
血液透析によって日常生活はどのように変わるのでしょうか。
血液透析は、週に3回、月・水・金、あるいは火・木・土に通院することが多いです。午前中に透析を受ける方の場合、起床して食事をとり、通院の準備をし、透析の針を刺す際の痛みを和らげるためのテープや塗り薬を使ってから、医療機関に向かわれることになります。
到着してから透析開始まで、少し待ち時間があることもあります。透析そのものは、1回あたり4~5時間の方が多いです。その後は、少し遅めの昼食となることが多く、「透析の日は疲れて、あまり動けない」と感じる方もおられます。
一方で、透析の日であっても、体力や体調に応じて生活を工夫されている方も多く、仕事を続けている方、趣味を楽しまれている方もおられます。
また、国内外の透析施設に臨時透析を依頼して、旅行を楽しまれている方もいます。
生活の形は、本当にさまざまです。
なお、当院では、透析当日は入浴を控えるようお伝えしています。そのため、透析前に入浴を済ませて来院される方もおられます。
仕事や家事を続けることができるのか
透析を受けていない時間帯については、それぞれの体調や体力に応じて活動されています。
透析のない日に仕事をされている方もいますし、夕方以降の夜間透析を選び、昼間は働いておられる方もおられます。家事についても同様です。近年は働き方改革も進み、
比較的柔軟に働ける職場も増えてきているのではないかと思います。私の経験では、透析を続けながら仕事を続けている方は、決して少なくありません。
食事制限について
透析が始まる前から、食事制限を一生懸命続けてこられた方も多く、食事の変化について不安に感じる方は多いと思います。
計画的に血液透析を開始された方の場合、特に導入初期は、腎臓の働きがまだ残っていて尿が出ている間は、大きな食事制限の変更が必要ないこともあります。
しかし、時間の経過とともに腎機能は低下し、数か月で尿量がほとんど出なくなる方が多いのも事実です。そうなってくると、塩分や水分の制限、カリウムやリンの管理が必要になってくる方が多いです。これらは、体重の増え方や血液検査の結果からわかりますので、医師や看護師から「そろそろ気をつけていきましょうか」とお話しするようにしています。
一方で、過度な食事制限は、カロリー不足や筋肉量の低下につながり、体力を落としてしまうこともあります。制限しながら十分に食べることは簡単ではありませんが、管理栄養士と相談しながら、少しずつ調整していくことが大切です。
個人的には、「おいしいと感じること」は人生の大切な楽しみだと思っています。無理のない範囲でお酒を楽しまれている方もおられますし、制限の中でも楽しめる食事の工夫はたくさんあります。大変なことも多いですが、できるだけ食事を楽しんでいただきたいと思っています。
体調の変化について
血液透析開始後の体調の変化には、個人差があります。
腎機能がかなり低下してから透析を開始された方では体が尿毒症状態に慣れてしまっているので、透析によって尿毒症状態が改善することで、「体調が良くなった」「食事の味が分かるようになった」とおっしゃる方もおられます。
ですが、「特に変わらない」と感じる方が多いようです。
尿の量が減り、透析ごとに多くの水分を除去する必要がある方では、透析中や透析後に血圧が下がり、「きつい」と感じることもあります。
副作用について
透析中に血圧が下がって気分が悪くなったり、吐き気を感じたりすることがあります。
血液透析では、シャントに針を刺すため、出血や皮下出血(皮膚に色がつく)が起こることもあります。
また、透析回路内で血液が固まらないようにする抗凝固薬(ヘパリンなど)を使用するため、一般の方より出血しやすい傾向があります。
かゆみを訴える方も多く、調査では約8割の方がかゆみを感じているとされています。日常のスキンケアや、必要に応じてお薬で対応しています。
長期的には、動脈硬化が進みやすくなり、脳卒中や心筋梗塞といった血管の病気が起こりやすくなります。骨が弱くなり、骨折しやすくなることもあります。これらは、透析そのものの副作用というより、腎臓の病気が全身に及ぼす影響と考えられます。
ご心配が増えてしまうかもしれませんが、以前のブログ(血液透析の合併症)でもご紹介しています。
ご家族への負担について
日常生活が変わることで、体調に応じて家族のサポートが必要になることもあります。
腎臓以外の病気で通院が必要になることもありますし、家族行事に合わせて透析スケジュールを調整することもあります。こうした点は、事前に医療機関へ相談していただくとよいと思います。
費用について
以前は、透析には多額の費用がかかり、大きな負担となっていました。
現在では、血液透析を受けている方には医療費の助成制度があり、自己負担が極端に高額になることは少なくなっています。
ただし、状況によって異なりますので、詳しくはそれぞれの医療機関でご相談ください。
漠然とした不安について
透析という治療は、一般の方にはなじみが薄く、あまり良いイメージを持たれていないことも多いと思います。さまざまな情報に触れる中で、不安を感じるのは当然のことです。
私たちは、透析医療に携わる者として、そうした不安と向き合ってきました。
自分の不安を言葉にするのは難しいこともありますが、どの透析施設にも、話を聞いてくれる医師や看護師、スタッフがいると思います。どうか遠慮なさらず、尋ねていただきたいと思います。
最後に
今日は、アンケート結果をもとに、私なりの考えを書かせていただきました。
透析は簡単な治療ではなく、そのことは間違いありません。それでも、透析をしながら人生を続けている方がたくさんおられます。不安やつらさを抱えながらも、折り合いをつけ、ときには「がんばってきてよかった」と話してくださる方、笑顔を見せてくださる方もおられます。もし透析を受けることになっても、どうか人生を楽しんでいただきたい。そのお手伝いができればと思っています。
【ご参考までに】
医療法人陽蘭会 広瀬クリニック
廣瀬 弥幸
