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シャントの痛み|痛む場所やタイミングから考えられる原因をシャント医が解説

[2026.08.12]

 

シャントの痛みを我慢している方へ、
できることがあることをお伝えしたいと思います。

 

血液透析では、血液を取り出し、
再び体に戻すためのシャントが必要になります。

そのシャントに痛みを感じている方がおられます。

透析は多くの場合、週に3回受けなければなりません。
それだけでも生活の中で大きな時間を使う治療です。

そのたびに痛みまであるというのは、とてもつらいことだと思います。

ところが、シャントの痛みは原因が分かりにくく、
対処が難しいことが多いです。

患者さん自身が、

「言っても仕方がない」
「いつものことだから」

と我慢していることもあります。

また、スタッフも、穿刺場所を変えたり、
腕の位置を変えたりするなどして工夫しているものの、
なかなか改善しないため、そのままになっていることもあるかもしれません。

私は、生きて、人生を楽しむために透析を受けているのだと思っています。

週3回もある透析だからこそ、
そこで感じる痛みや不快感を少しでも減らすことには大きな意味があります。

また、「なぜ痛いのか分からない」ということ自体が、患者さんの不安につながります。

そこで今回は、シャントの痛みにはどのようなものがあり、
どのように考えていけばよいのかをお話しします。

 

シャントの痛みは一つではありません

シャントに関係する痛みは、実は一つではありません。

同じ「シャントの腕が痛い」という訴えでも、原因はかなり違います。

そのため私は、まず

「いつ痛いのか」
「どこが痛いのか」

を考えます。

大きく分けると、次の3つに分けて考えることができます。

① 透析中に出る痛み

透析中に出る痛みにも、いくつかのパターンがあります。

  • 針を刺した場所が痛い
  • 透析を開始して、血液を取り出す/戻すと痛い
  • シャントより先の手の方が痛い
  • シャントより肩側の腕が痛い
  • 透析の後半になると痛みが出てきて、だんだん強くなる

針そのものが原因の場合もあれば、
透析中の血流の変化や血管の状態が関係している場合もあります。

たとえば、針先が血管壁に当たっているだけであれば、
針の位置を調整することで改善することがあります。

一方で、透析を続けるにつれて痛みが強くなる場合には、
もう少し別の原因を考える必要があります。

日本透析医学会の2011年版バスキュラーアクセスガイドラインでも、
アクセス関連疼痛について、穿刺部の痛み、シャントより末梢側の痛み、
中枢側の痛みなどに分けて考えられています。

私自身も以前、この分類をもとにシャントの痛みについて学会で発表しています。

 

② 透析をしていないときにも出る痛み

透析が終わってからも痛い、
あるいは普段から痛みがある場合には、少し違った視点で考えます。

たとえば、

  • 手が冷たい、しびれる、痛む
  • シャントより先の手や腕がだるい
  • 腕が腫れて張るように痛む
  • シャント周囲が赤く腫れて痛む

などです。

病名などでいうと、

  • 手や指への血流が不足することで痛みが出るスチール症候群
  • 心臓に近いところの静脈が狭くなったり詰まったりして、
    腕が腫れたり静脈の圧が高くなったりする静脈高血圧症
  • シャントが詰まり、血栓(血の塊)ができるシャント閉塞
  • シャントや周辺に細菌などが入るシャント感染
  • シャントからの出血や血腫

などがあります。

特に、

  • 急に強く痛くなった
  • 赤く腫れた
  • 熱を持っている
  • 手や指が急に冷たくなった
  • シャント音が聞こえなくなった

といった場合には、早めに医療機関へ相談してください。

 

③ シャントとは別の原因の痛み

シャントがある腕が痛むと、どうしても「シャントが悪い」と思ってしまいます。

しかし、必ずしもそうとは限りません。

  • 手根管症候群
  • 頚椎(首の骨)周辺の病気
  • 肩関節付近の病気

などでも、シャント側の腕や手に痛みやしびれが出ることがあります。

頚椎や肩関節については、透析中には長時間腕を自由に動かせないため、
そのことによって痛みが出ている場合もあります。

そのため、必要に応じて整形外科の先生に診ていただくこともあります。

 

原因を一つずつ絞り込んでいきます

私はシャントの痛みを診るとき、

  • いつから痛むのか
  • 透析開始からどのくらいで痛くなるのか
  • どこが痛むのか
  • どのような痛みなのか
  • 抜針するとどうなるのか
  • 透析をしていない時でも痛むのか

などを確認します。

そのうえでシャントを診察し、必要に応じてエコーで、

  • 血管の狭窄
  • 血流
  • 血栓
  • 血管やその周囲の状態

などを確認します。

場合によっては血管造影などで、
シャントより心臓側の血管に狭窄や閉塞がないかを調べたり、
整形外科など他の専門科で診てもらったりすることもあります。

私は、このように考えられる原因を一つずつ減らしていくこと自体にも、
意義があると思っています。

「原因が分からない」ということも、痛みを抱えている患者さんにとっては不安であり、
不安は痛みの感じ方にも影響することがあるからです。

 

治療は原因によって変わります

当然ながら、治療も一つではありません。

  • 首や肩の病気、血管の病気などがあれば、その治療をする
  • シャントに狭窄があればPTAなどで治療する
  • 穿刺する場所を変える
  • 針の位置を調整する
  • 透析中にシャントのある腕の位置を変える、時々動かす
  • 透析条件を調整する
  • 痛みを減らす塗り薬を使用する
  • 痛み止めの薬を飲む
  • 温める、あるいは冷やす

などの対応を考えます。

原因が見つかれば、それを治療することで痛みが改善することもあります。

一方で、こうした原因では説明しにくい痛みもあります。

 

原因がはっきりしない「シャント血管痛」

実際の診療では、シャントに明らかな異常が見つからないのに、
透析中、特に後半になるとシャントが痛くなる患者さんがおられます。

透析を始めた直後には痛くありません。

ところが、2時間ほど経ったころから不快感を伴う痛みが出てきて、次第に強くなります。

そして、透析を終了して針を抜くと、痛みが消えます。

このような特徴的な痛みがあり、一般に「シャント血管痛」と呼ばれることがあります。

しかし、その原因は十分には分かっていません。

このような特徴的な痛みについては、
別の記事で、原因の考え方や当院で行っている治療について詳しくご紹介しています。
透析後半に痛みが出る「シャント血管痛」|原因と治療をシャント医が解説

 

最後に

シャントの痛みは、よくあるけれど、分かりにくい症状です。

長く透析を受けている方の中には、「いつものことだから」と我慢している方も少なくないと思います。

また、対処が難しい場合があるのも事実です。

しかし、原因によっては対応できる場合もあります。

「ずっと痛みを我慢してきた」

「いつもと違う」

「最近痛みが強くなった」

「透析を続けるのがつらい」

と感じたときには、遠慮せずに、どのような時に、どこが、どのように痛むのかを、
まずは透析スタッフや主治医に伝えていただければと思います。

 

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長崎市 広瀬クリニック 院長 廣瀬弥幸

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