今のシャントが使えなくなったらどうする? ――透析患者さんの次の選択肢をシャント医が解説――
透析患者さんが最も不安になる出来事の一つが
「シャントが使えなくなること」です。
・シャントの音が弱くなった
・透析で血流が取れないと言われた
・シャントの血流がとても悪い
・腕がむくんできた
・「シャントが詰まりかけているかもしれない」と言われた
そんなとき、
「今のシャントが使えなくなったら、もう透析ができなくなるのではないか」
と不安になる方も少なくありません。
しかし、血液透析を続けるための次の選択肢は、いくつもあります。
シャント治療にはいろいろな考え方があり、
施設や医師によって手術方法や方針が異なることもあります。
ここでは特定の治療法を勧めるというより、
今のシャントが使えなくなったときの一般的な選択肢を整理してみます。
シャントが使えなくなる原因
シャントが使いにくくなる理由はいくつかあります。
よくある原因は次のようなものです。
- 血管が狭くなる(狭窄)
- 血管が詰まる(閉塞)
- 針が刺しにくくなる
- 感染して治らない
多くの場合、突然完全に使えなくなるわけではなく、
少しずつ兆候が出てくることが多いです。
そのため、早めに気づくことが大切になります。
多くの場合、治療で改善できることがあります
シャントのトラブルが起きると、
「もうこのシャントは使えないのではないか」
と心配される方も多いと思います。
しかし実際には、
PTAなどの治療によって血流が回復することも少なくありません。
そのため、シャントの音が変わったり、
透析で血流が取りにくくなったと言われた場合には、
早めに診察を受けることがとても大切です。
シャントが使えなくなったときの主な選択肢
シャントが使えなくなった場合でも、透析を続けるための方法はいくつもあります。
血液透析を継続する場合、主な方法は次のようになります。
① PTA(シャントの血管を広げる治療)
シャントの血管が狭くなっている場合、
カテーテルを使って血管を広げる治療(PTA)で改善することが多いです。
透析シャントのトラブルでは、比較的よく行われる治療です。
必要に応じて繰り返し行うことができます。
また、シャントが完全に詰まってしまった場合の治療については
「シャントが詰まったとき(シャント閉塞)」
のページで解説しています。
このような治療によって、
今のシャントを使い続けることができることは多いです。
②シャントを作り直す
PTAなどの治療をしても今のシャントが使えない場合、
別の場所に新しいシャントを作るという方法があります。
腕の血管の状態を見ながら、作れる場所を検討します。
可能であれば、シャントがある側の腕の、
より肩に近い側で作り直すこともあります。
この場合、手術後、早めにシャントを使えることがあります。
一方、反対側の腕にシャントを作る場合は、
完全に新しいシャントになりますので、
手術後 10日〜2週間ほど経過してから、
シャントを使うことが一般的です。
そのため、入院期間が少し長くなることがあります。
また、シャント手術では、将来の再手術の可能性も考えて
できるだけ手首に近い場所から作るように心がけています。
その方が、将来シャントを作れる場所が増えるためです。
患者さんの血管の状態によりますが、
一般的には両腕を合わせて数か所(3〜4か所程度)で
シャントを作ることが可能な場合が多いです。
新しいシャントを作る場合には、
入院期間や手術の流れなどが気になる方も多いと思います。
シャント手術のタイミングや入院期間については
「シャントはいつ作る? 血液透析を始める前に知っておいていただきたい時期の話」
のページでも解説していますので、参考にしてください。
③ 人工血管シャント
血管が細いなどの理由で、
自分の血管だけではシャントを作ることが難しい場合、
人工血管(人工血管シャント:AVG)を使う方法もあります。
AVGについては以下の記事でご説明しています
人工血管を使ったシャントが狭くなったと言われたら:ステントグラフトという新しい治療について
④ 動脈表在化
肘から肩の方にかけて、腕の内側には動脈があります。
通常、この動脈は深い場所にあるため
針を刺すことができません。
しかし手術によって
動脈を浅い場所に移動させる手術があり、
これを「動脈表在化」と呼びます。
この手術を行うことで
動脈に直接針を刺して透析を行うことが可能になります。
⑤ 一時的に透析カテーテルを使う
手術の準備や治療の間、
また作ったシャントが使えるようになるまでは、
一時的に透析カテーテルを使用することがあります。
首の付け根や足の付け根の太い静脈にカテーテルを入れて透析を行います。
感染や出血の可能性があるため、
通常は 入院中に使用する方法です。
⑥ 長期留置カテーテル
長期間使用できる透析カテーテルもあります。
多くの場合、首の付け根の静脈からカテーテルを入れ、
皮膚の下を通して胸の鎖骨の下あたりからカテーテルが出る形になります。
この方法では、
カテーテルを入れたまま退院して
外来で透析を続けることができます。
今のシャントが使えなくなっても選択肢がある
透析患者さんにとって、
シャントはとても大切な血管です。
そのためトラブルが起きると、
誰でも不安になるものです。
シャントが使えなくなってしまっても、
PTAなどの治療によって再び使えるようになることは少なくありません。
慌てずに主治医の先生と相談しながら、
その時の状態に合った方法を考えていくことが大切だと思います。
また、
シャントが使えなくなった
=透析ができなくなる
ということは、
ほとんどの場合ありません。
状況に応じていくつもの方法を組み合わせながら、
何らかの形で透析を続けていくことができます。
実際の診療でも、
「もうこのシャントは難しいかもしれない」と言われたあとに、
治療によって再び使えるようになるケースもあるのです。
もし、
・シャントの音が変わった
・腕がむくんできた
・透析で血流が悪いと言われた
など気になることがあれば、
遠慮なく、早めに透析スタッフや担当医に相談してみてください。
シャントは、透析を支える大切な血管です。
日頃から大切にしていただければと思います。
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廣瀬 弥幸
