医療の歴史から考える「連携」と医療の「これから」:医療経営士の機関誌「理論と実践」第6回より
日本の医療の特徴は、その歴史に根差すところが大きいです。
①高度成長期前の貧しかった時期には税金等の公的資金で十分な数の病院を作ることができなかったので、開業医たちが投資して病院を作り、都市部だけでなく地方まで病院が行きわたっていきました。
②日本の病院では、その病院に所属している医師が入院病床を使用することが一般的です
③日本の医師は、基本的に専門医です(あるいは何らかの専門をもっています)
例えば、新型コロナウイルスが流行しはじめた時期に、「日本の病院は民間が多い」とよく言われましたが、その原因の一つは①にあります。
また、日本の外来診療は「待ち時間が長い」「3分診療」と言われます。①からすると、もともと外来診療をしていた開業医が地域の医療を支えるために病院(入院施設)を作ってきたのですから、当然外来診療も続けてきたわけです。多忙な入院診療をしながら、多くの外来患者さんの診療もするので、病院で「待ち時間が長い」「3分診療」言われるような状況が生じているのです。
①②③からして、病院は外来から入院、それも高度医療までを自己完結する方向性でした。診療科も増やし、高度な医療機器を完備し、総合病院化して地域を守ってきたのです。
これらのように、医療の歴史/成り立ちは医療に大きな影響を与えており、変わっていくことには難しさがあります
しかし最近では、人手不足のため多くの分野を担うことが難しくなっています。また、物価高の影響を大きく受けていますが、いただける診療報酬の単価はほとんど増えていません。病院ではなく在宅等での看取りが増えたり、外来受診回数を減らしたりする等、新型コロナウイルス後の患者さんの受診行動変化によって患者数が減っているため、長崎でも医療機関の倒産や閉院が相次いでおり、医療の存続が危ぶまれる状況になっています。
医療の歴史的な変遷を認識しつつも、意識的に「機能分化=やらないことを決めて、連携する」と方向転換することが重要です。第6回の連載に医療の歴史と連携について書いておりますので、ご覧いただければと思います。
それで長期的に安定的な経営を続けていけるかは、また別のお話ですが。