年明けの新型コロナウイルス感染拡大に備えて
長崎でも、ここ10日間ほどで新型コロナウイルス感染が広がってきました。以前から言われてきたように、やはりインフルエンザと同様、冬場に広がりやすいのは間違いなさそうです。新型コロナウイルスが日本に入ってきて初めての年末年始を控え、感染対策は重要な時期を迎えています。
【例年のインフルエンザ感染の増え方】
毎年のように流行していたインフルエンザの増え方は、新型コロナウイルスの広がりの一つの参考になると思われます。
2019-2020年の全国データでは、2019年の年末である第51週目に感染のピークがありました。
2018-2019年のシーズンでは、年明けである2019年の4週目にピークがあります。
2017-2018年では年明けの第3週目にピークがあり(下図)、その前のシーズンも同様でした。
過去4シーズンで見てみると、3シーズンで年明けにピークがありました。
一方、長崎県で見てみますと、2019-2020年のシーズンでは第4週にピークがありました。
それ以前の長崎県の10年間のデータで見ても、9回は年明けにピークがありました。この結果から、地方都市である長崎には年末年始の移動でインフルエンザで広がっていることが推測されます。このことからすると、新型コロナウイルスも年末年始で全国に広がる可能性があると考えれます。
【長崎市の例年の1月の医療の状況】
長崎市は、病院数や医師数などの医療の提供が比較的多い地域です。
しかし、毎年1月下旬ごろから、救急医療をしているような急性期病院では入院ベッドが満床に近づきます。それに続いて、急性期病院からの転院を引き受けてくださる病院もすぐに一杯になって、急性期病院のベッドが空かなくなります。そうなりますと、救急車の受け入れにも苦労するような事態になります。長い年では、4月の初めまで急性期病院の入院ベッドが一杯だった、ということもありました。新型コロナウイルスがない年でも、このような状況だったのです。長崎市以外でも、この時期が最も忙しい時期だという地域が多いのではないでしょうか。
【来年の1月を迎えるに当たって】
現在長崎県でも、新型コロナウイルスに対応するために、感染症指定医療機関などが体制を整えてくださっています。この場合、「新型コロナウイルスによる医療の逼迫について」にも書きましたように、新型コロナウイルスの診療をするための病床を確保し、スタッフを捻出するために他の病棟を閉鎖するなどの対応をしているはずです。この準備をするだけでも、長崎市では1月末からの新型コロナウイルス以外の診療に支障を来たすことが十分考えられます。そのキャパシティを超えてさらに多くの方が新型コロナウイルスで入院を要するようになると、より一層厳しい状態になります。
【年末年始の感染対策】
本来人にとって、人と会ってコミュニケーションをとるのは大変重要なことです。本来であれば帰省や成人式などは、そのための重要な機会です。しかし、インフルエンザと違って、新型コロナウイルスではまだ「年末年始の移動がどれくらい感染の拡大につながるか」がわかっていません。
来年の暦では、1月9-11日が3連休になっています。そのため、1月12-15日に多くの方が受診したり検査を受けたりして、年末年始の新型コロナウイルスへの影響の規模がわかるのではないでしょうか。ですから、1月15日までは人の移動を可能な限り抑え、そこまでの影響を見てからその後の計画を立てるべきだと考えます。
以下に私見を含めた対策を記載いたします。感染対策は全ての皆様にご協力いただくことが大切ですが、高齢の方や持病がある方はもちろんのこと、このような方と同居しているご家族には、特に用心をしていただきたいと思います。
・不要不急の移動(帰省や成人式を含む)や会食は避ける
・発熱や風邪症状、味覚や臭覚の異常がある場合などでは、まず電話で相談を
・三密を避ける
・マスク着用の徹底:鼻も隠れるように
・手指消毒の徹底
など
【最後に】
感染してから発症するまでに時間のかかる新型コロナウイルスは、「やっぱり増えましたね」となってからは「後の祭り」になってしまうところが大変に困る感染症です。大きく増えた感染者数が減るのには数週間を要することが多いようですが、医療にも限界があることは確かです。医療が崩壊する前に、そして年末年始を控えた今こそ、感染対策の再徹底をしていただきたいと思います。
【参考資料】
国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html
長崎県
https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/hukushi-hoken/kansensho/kansen-c/kansen-nenpou/
医療法人陽蘭会 広瀬クリニック
廣瀬 弥幸