腎臓病や透析の患者さんを、家族はどう支える?|無理をしない関わり方を専門医が解説
はじめに
ご家族が腎臓病や透析となったとき、
「何をしてあげればいいのか」と悩まれる方は多いと思います。
結論からお伝えすると、
ご家族にとって大切なのは「正しくさせること」ではなく、
無理なく続けられる形で寄り添うことです。
腎臓病や透析は長く付き合っていく病気・治療です。
その中で、ご本人とご家族がどのように関わっていくかは、
とても大切な問題になります。
ここでは、これまで診療の中で見てきた現実も踏まえながら、
ご家族としての関わり方や支え方についてお話しします。
患者さんの気持ち
腎臓病が進行して元の状態に戻ることが難しい場合や、
透析を開始して今後も継続していく必要がある場合、
患者さんは長く病気と向き合っていくことになります。
治療は薬だけではありません。
食事療法、血圧測定、体重管理、適度な運動、定期的な通院など、
日常生活の中にさまざまな管理が必要になります。
これらは日々の生活の中で負担になることも多いですし、
「自分は病気である」という意識を持ち続けることが、つらくなる方もいます。
また、人間ですから、すべてを完璧に続けることは難しいものです。
病気を受け入れられないと感じたり、怒りや落ち込みが出たりすることもあります。
その結果、薬を飲めなくなったり、
食事が乱れたりすることも決して珍しいことではありません。
むしろ、そういうことがあるのが人間だと思います。
こうした背景を、ご家族が理解しておくことはとても大切だと思います。
ご家族の関わり方
ご家族にとって大切なのは、「正しくさせること」ではなく、
「寄り添うこと」です。
腎臓病や透析は、ずっと付き合っていくものです。
そのため、指示したり強く求めたりするよりも、
見守りながら支えていく姿勢が重要だと思います。
薬について
薬をきちんと飲むことはとても大切ですが、
100%正確に内服を続けることは、簡単ではありません。
研究でも、薬の種類や錠数が増えると、実際の内服率は50〜70%程度になると報告されています。
私自身も、医師であっても完璧に続けることの難しさを感じており、
100%ではないことを前提にして診療をしています。
そのため、「飲めていないこと」を責めるのではなく、
「続けること自体が難しい」という前提で支えることが大切です。
ただし、ステロイドや免疫抑制剤など、どうしても確実な内服が必要な薬については、
ご家族が一緒に確認するなど、もう一歩踏み込んだサポートが必要な場合もあります。
食事について
食事療法も非常に難しいものです。
健康な方でも、食べ過ぎたり、塩分を取りすぎたりすることはあります。
長期間にわたって食事制限を続けることは、誰にとっても大きな負担です。
大切なのは、「完璧を目指すこと」ではなく、「続けられる形を見つけること」です。
例えば、
- 食べ過ぎた翌日は控えめにする
- 1週間単位でバランスを考える
- 特別な日は楽しみ、他の日で調整する
など、それぞれのご家庭で続けられる工夫が大切です。
食事療法については別の記事も書いておりますので、よろしければご覧ください。
正解は一つではない
人間が一人ひとり違うように、
腎臓病や透析との向き合い方にも「正解は一つではない」と私は思っています。
長く続けることができ、心が穏やかでいられる、
そのような治療や生活の形が、それぞれにあるのではないでしょうか。
私は医師として、薬をきちんと飲んでいただくことや、
塩分を控えることの大切さはお伝えしています。
しかし同時に、それは生活が成り立っていることが前提であるとも考えています。
100%の正しさにこだわるよりも、
ご本人とご家族が無理なく続けられる形で、
治療と人生が両立していくことが大切だと思います。
事例
ずいぶん前の患者さんですが、印象に残っているご家族の例があります。
高齢のため介護が必要な患者さんでした。
ご家族は同居されていましたが、お仕事もあり、
治療と介護の両立に大きな負担を感じておられました。
この患者さんの腎臓病が進み、血液透析を開始することになりました。
そこで私たち医療者と介護職で相談し、週3回の血液透析の通院に加えて、
別の日にデイサービスを週3回利用する形にしました。
その結果、ご家族の負担を減らすことができました。
私は、内服薬をできるだけ整理し、朝1回で済むように調整しました。
その結果、ご家族の負担は軽くなったと伺っています。
食事については、ご高齢であるため、
塩分やたんぱく質の食べ過ぎの問題は少なかったのですが、
果物が大好きな方で、量が多くなりやすい状況でした。
透析の方はカリウムの摂りすぎは問題になります。
そのため、
「果物は楽しんでいいのですが、量だけ少し控えましょう、みかんは1日1個にしませんか」とお伝えしました。
それ以外については、
「検査や体重で注意が必要なときに一緒に考えていきましょう。できる範囲で大丈夫ですよ」とご家族にお話ししました。
結果として、厳しい制限を設けることなく、
ご本人とご家族の生活のバランスが保たれ、
無理なく治療を続けることができていました。
このような形は一例であり、
それぞれのご家庭で無理なく続けられる形を見つけていただくことが大切だと思います。
なお、eGFRの少しでも低下を緩やかにする方法について、
腎臓を守るために自分でできる7つの習慣にまとめていますので、ご覧ください。
人生を楽しむこと
病気であっても、人生は楽しむべきものだと私は思っています。
「心配だから」「安全のために」と、
旅行や行事をすべて控えてしまうことは、必ずしも良いことではありません。
むしろご家族には、
- 旅行に行ってみよう
- 以前好きだったことを再開してみよう
- 誰かに会いに行こう
といった前向きな声かけをしていただくことも大切です。
治療は、人生を楽しむために続けていくものだからです。
透析治療と人生については、こちらの記事にも書いています。
仕事について
透析を受けながらでも、仕事を続けている方は多くいらっしゃいます。
職場の理解とサポートがあれば継続できることもよくありますし、働き方を変える方もいます。
仕事は、社会とのつながりや自己肯定感につながる大切な要素です。
可能な範囲でご家族や職場が支えていくことが、
患者さんの生活の質にもつながると感じています。
仕事についてはこちらの記事もご覧ください
医療・入院時のサポート
腎臓病や透析では、通院の継続が前提となります。
また、感染症や心血管疾患など、他の病気が起こることもあります。
入院や手術の際には、ご家族のサポートが必要になる場面も多くあります。
医療者側も、ご家族に説明したい内容が多くありますし、
ご家族のご理解と同意がないと手術等の治療を行うことができない場合も多いため、
ご協力いただきたいと思います
介護について
透析導入時の平均年齢は高く、高齢の患者さんも増えています。
そのため、病気以外に介護が必要になるケースもあります。
その場合は、介護保険やケアマネジャー、
地域包括支援センターなどを活用することが大切です。
ご家族だけで抱え込まず、早めに相談することで負担を減らすことができます。
透析と介護については、こちらの記事もご覧ください。
→透析と介護は両立できる?家族の1週間スケジュール例を医師が解説
また、透析患者さんの施設入所や、
介護施設との連携については、こちらの記事でも詳しくお話ししています。
→透析を受けている方は介護施設に入所できる?|ご家族が知っておきたい現実と対応
まとめ
腎臓病や透析は、長く付き合っていく病気であり、
患者さんご本人だけでなく、ご家族にとっても大きな出来事です。
ご家族もまた、不安になったり、迷ったりするのが自然なことだと思います。
完璧に支えることを目指すのではなく、
「一緒に長く続けていく」という姿勢が大切だと、私は思います。
そして、ご家族ご自身の生活や人生も、大切にしていただきたいと思います。
困ったときには、医療機関や介護サービスの方にご相談ください。
ご家族を支える仕組みも、医療の一部です。
当院では、医師だけでなく看護師や管理栄養士などがチームとしてご家族をサポートしています。
長崎で暮らすご家族の方にも、
少しでもお力になれればと思っております。
生活上の困りごとがあれば、
診察の際にお気軽にお声がけいただければ幸いです。
【ご家族としてどう関わるか悩まれている方はこちら】
eGFR:20を切るとどうなる?|症状・治療・透析準備を専門医が解説
eGFRが30を下回ったら|透析と言われる前に知っておきたいこと
【参考記事】
透析は本当につらい治療なのか ――透析医として患者さんを見てきて思うこと――
透析と言われたらどうすればいい? ――準備と考え方を腎臓内科医が説明 ――
透析を始めるときの流れ|入院・通院・不安について透析医の視点でお話しします
シャント手術の入院期間はどれくらい? ――人によって違う理由を医師が解説――
シャントはいつ作る? 血液透析を始める前に知っておいていただきたい時期の話
シャントを作ったらいつ透析? 血液透析を始めるタイミングを腎臓専門医が解説
【私がこの治療で大切にしている考え】
私がこの治療で大切にしている考えについては、
こちらの記事でも、少し詳しくお伝えしています。
【よく読まれています】
腎臓病と透析についてまとめたページはこちら
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廣瀬 弥幸
