血液透析と言われたけれど、 実際どんな治療なのか分からず不安な方へ |透析医が現場で感じてきたこと
透析が必要と言われた直後は、
気持ちが追いつかず、不安でいっぱいになる方も多いと思います。
そうしたお気持ちについては、
こちらの記事で詳しく書いていますので、
よろしければそちらもご覧ください。
血液透析という治療については、
「大変そう」
「つらい」
「できれば避けたいもの」
そんな言葉で語られることが多いように感じます。
もちろん、楽な治療ではありません。食事の制限もありますし、通院の負担もあります。
血液透析以外の治療法である腎移植、腹膜透析、保存的腎臓療法にも、それぞれ大きな利点があり、それらを否定するつもりは全くありません。
ただ、現場で長く透析医として患者さんを診てきて、
あまり語られていないけれど
知っておいてほしい側面があるとも感じています。
患者さんの変化に気づきやすいこと
ちょっとした体調の変化や、「いつもと少し違うな」と私たち医療者が感じる様子から、
「念のため血液検査をしてみましょうか」と声をかけたことがあります。
見た目には元気そうで、通常であれば血液検査をしないような場面でした。
しかし、結果は予想以上に悪く、そのまま緊急対応が必要になったことが、これまで何度もありました。
こうした血液検査は、検査をすればするほど医療機関側の経済的負担が増える場合もあり、決して“効率がいい”ものではありません。
それでも、定期的に顔を合わせ、「何かおかしい」と感じたときにすぐ検査ができる環境があることは、患者さんの命を守る上で、とても大切なことだと思っています。
行ったほうがよい定期検診ができること
透析患者さんでは、一般の方に比べて、がんなどの病気が多いといわれています。
だからこそ、定期的に通院し、体調の変化に気づきやすい環境があり、また必要な検査について医療機関からお伝えできることは、悪いことばかりではないと感じています。
人と会うこと
血液透析に通院すると、患者さん同士が顔見知りになり、おしゃべりをしたり、冗談を言い合ったりする光景を見ることがあります。
スタッフとも自然と関係が深まり、ご家族のことや日々の出来事を共有し、お祝い事を一緒に喜ぶこともあります。
定期的に通院するからこそ、季節や月の移り変わりを一緒に感じることもあります。
「お正月だから、食事は少し気をつけましょうね」
「暑くなってきたので、血圧や脱水に注意しましょう」
そんな何気ない会話の積み重ねが、生活を支えていると感じることも少なくありません。
病院が「人と会う場」だから行く意味がある、ということでは決してありません。
血液透析を喜んで受けている方はいない、とも思っています。
行きたくない治療である一方で、そこが人と人がつながる場所になることもあり、それが、ささやかな楽しみや慰めになることもある。そんなふうに感じています。
高齢の方が過ごす場所として
以前、少年ソフトボールチームのコーチをしていたとき、他のチームの監督さんから「部活動が学童化している」という話を聞き、驚いたことがあります。
共働きが当たり前の時代、子どもを安心して預けられる場所になっている、という意味でした。
血液透析も、少し似た側面があるのかもしれません。
昼間の数時間、安心して身体を預けられる場所がある。それは、家族にとっても大きな支えになるのではないかと思います。
最後に
血液透析は、決して万能な治療ではありません。
向き不向きもありますし、ほかの治療法のほうが合う方もたくさんいます。
それでも、血液透析を選び、その中で人生や、自分なりの生活を取り戻し、楽しみを見つけている方がいるのも、また事実です。
家族のイベントに参加してほしい。
会いたい人に会ってほしい。
体調と相談しながら、食べたいものも、楽しんでほしい。
そんな思いを、透析室の現場で、何度も感じてきました。
血液透析は、悪いことばかりではありません。これを強く主張するつもりはありませんが、悪いことだけで語り切れる治療でもないと、感じています。
そのことを、これからもお伝えしていきたいと思っています。
医療法人陽蘭会 広瀬クリニック
廣瀬 弥幸
