シャントはいつ作る?|専門医が教える「時期の目安」と「個別の事情」
※本記事は2026年時点の考え方を踏まえて一部追記しています。
以前書きましたように、血液透析を行うためには、動脈と静脈をつないだシャントが必要になります(血液透析にシャントが必要な理由)。
どなたでも透析は避けたいとお考えだと思いますが、血液透析では、十分な血液の流れがあって使いやすいシャントがあることは、とても重要なことです。
新型コロナウイルス感染が問題となっている現在、不要不急の受診や手術は控えたり遅らせたりすることもありますが、ここでは血液透析を開始する場合の「シャントの手術のタイミング」について述べたいと思います。
【シャントの種類と準備】
ご自分の腕の動脈と静脈を手術でつないだシャントは「自己血管使用皮下動静脈瘻(AVF:arteriovenous fistula)」と呼ばれ、日本の透析患者さんでは約89%の方がAVFでの血液透析を受けておられます。血管が細いなど、何らかの原因でご自分の血管でシャントが作れない場合には、人工血管(ゴムの管のようなもの)を使った「人工血管使用皮下動静脈瘻(AVG:arteriovenous graft)」であったり、カテーテル(点滴の管)を血管の中に入れておくことによって透析をしたりすることもあります。
ここではAVFのことを「シャント」と書きます。通常、シャントは手術直後には透析に使用しません。これは、手術後徐々に血管が発達してシャントの血液の流れがよくなるのを待つためで、ガイドラインでは初めてのシャントでは術後2週間以降に使い始めることが望ましいとされています(状況によっては2週間以内に使い始めることもあります)。
以下に、血液透析を始めてからシャントを作る場合と、事前にシャントを作っておく場合を比較してみます。
【血液透析を始めてからシャントを作る場合】
シャントの手術をしていない状況で、「今日か明日には透析が必要」という状況になったら、その後の治療はどうなるでしょうか。
・入院して、カテーテルを血管の中に入れることで血液透析(一般的には週3回)を始めます
・シャントの手術の予定を立て、手術を行います:患者さんの体調や血液透析の日程、手術される先生や手術室のスケジュールなどによって日程が決まります
・手術後2週間程度たってから、シャントに針を刺しての血液透析を開始します
・シャントは血液の流れがとてもよいので、針を抜いた後の止血に慣れる必要があるため、数回(例えば3回程度)血液透析をしてから退院することになります。
方法や期間は医療機関によって様々だと思いますが、ここに書いた例ですと、おおよそ1か月の入院が必要になります。
【事前にシャントを作っておく場合】
・血液透析をせずに、シャントの手術だけを行います:医療機関によって様々ですが、当院では通常1泊2日の入院で行っています
・シャントの手術はしても、腎臓のはたらきや症状等に問題なければ、血液透析を始める必要はありません。これまで通り主治医の先生とご相談しながら外来通院で治療を続けていきます。この期間は1ヵ月~1年など、それぞれの患者さんによって違います
・透析が必要と判断されたら、シャントから血液透析を始めます。針を抜いた後の止血に慣れる必要はありますので、例えば3回血液透析をしてから退院するのであれば、おおよそ1週間の入院が必要ということになります。
【事前の計画的なシャント手術の利点】
このように、事前にシャントを作っておくと入院期間が短くなります。
シャント手術をしても、血液の流れが十分でないために再手術などが必要となってしまうことが時にはありますが、血液透析を開始してからシャントを作った場合に再手術となると、さらに入院期間が延びてしまいます。
カテーテルを入れて透析を行う場合は、カテーテルが入っている部分から細菌が入って高い熱が出ることがありますが、事前にシャントを作っておけばその可能性もないことも大きな利点です。
事前にシャント手術を受けておいて、計画的に血液透析を始めて行くことを「計画導入」と呼びますが、現在ではできるだけ計画導入を行うようにしています。
【ガイドラインでのシャント手術の時期】
それでは、どのようなタイミングでシャントの手術を考えればいいでしょうか。
シャントが十分に発達して使用可能になる時間が必要であるため、ガイドラインでは
・eGFR(推算糸球体濾過量) が 15 mL/min/1.73 m2以下と、臨床症状を考慮し、シャント※の作製時期を判断することが推奨される
・溢水傾向を示しやすい糖尿病性腎不全では、より高値のeGFR でシャント※を作製することが望ましい
とされています。
eGFRはクレアチニン・年齢・性別により計算される値ですが、15 mL/min/1.73 m2にあたるのは、例えば
・70歳の男性では、血清クレアチニンが3.40 mg/dl
・70歳の女性では、血清クレアチニンが2.60 mg/dl
くらいです。意外と早い時期に透析のことやシャントのことを考えるのだな、と思われるかもしれません。
※ガイドラインではシャントでなくVascular Access(VA)という言葉で書かれています。VAにはシャントの他、カテーテル等の方法も含まれます
【個別の事情について】
ガイドラインではeGFRの目安が示されていますが、実際のタイミングは患者さんごとに異なります。
例えば、体に水分がたまりやすい状態(溢水傾向)がある場合には、eGFRがそれほど低くなくても、
透析開始を見据えて早めにシャントを作成することがあります。
また、血管の発達に時間がかかると予想される場合にも、余裕を持って早めに手術を検討することがあります。
このように、シャント作成の時期は一律ではなく、患者さんそれぞれの状態に応じて判断されます。
実際のタイミングについては、主治医の先生や腎臓専門医とご相談いただくことが大切です。
【診療案内】
以下のような方は、一度ご相談ください。
・eGFRが低い(45未満など)と指摘された方、
またはご自身で数値が気になっている方
・透析が必要と言われたが、まだ迷っている方
・シャントが狭いと言われた方
・PTAを繰り返している方
・シャント閉塞や血流低下を指摘された方
・痛みや治療方法について相談したい方
・主治医の先生からシャント治療を勧められた方
・他院でシャント治療について相談したい方
※他院通院中の方は、まず主治医の先生とご相談ください
まずはご相談だけでも構いません。
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廣瀬 弥幸
