腎臓の数値が気になる方へ|食事療法、全部守らないとダメ?専門医が解説
はじめに
食事療法は、とても難しいものです
血液透析を始めるとき、
あるいはその前に腎臓の機能が悪くなってきた段階で、
食事についての指導を受ける方は多いと思います。
カリウム、塩分、たんぱく質、リン、水分量……
さまざまな説明を受けて、
「全部守らないといけないのかな」
「できなかったら体に悪いのかな」
と、不安になる方も少なくありません。
正直に言うと、
私自身が同じ指導を受けて、
毎日の食事を完全に守るようにと言われたら、
それはとても難しいと思います。
そもそも、
血液透析を「受けたくて」来院される方は、ほとんどいません。
病気の結果として透析が必要になり、
生活が変わり、
食事にも多くの制限がかかる。
そのうえで、
「できていない」と叱られるようなことがあれば、
正直、患者さんはやっていられないと思います。
だから私は、
専門医として伝えるべきことはきちんとお話ししますが、
できなかったことを理由に、
患者さんを叱ったり、責めたりする気持ちは全くありません。
「どうやって折り合いをつけていくか」
それを一緒に考えていきたいと思っています。
実際、
ほとんどの患者さんが心の中で、
「そんなの、難しいよ」
「正直、無理だよ」
と思っておられます。
まずは、
それは特別なことではない、
ということを知っておいてほしいと思います。
栄養指導を否定したいわけではありません
ここで一つ、大事なことをお伝えします。
私は、
管理栄養士や医療スタッフによる栄養指導やガイドライン、
そして栄養療法を一生懸命に続けておられる患者さんを、
否定するつもりは全くありません。
広瀬クリニックでも、
管理栄養士による栄養指導を行っていますし、
それはとても大切な医療の一部です。
ただ一方で、
「理論として正しいこと」と
「人が毎日続けられること」
は、必ずしも同じではありません。
そのギャップに苦しむ方が多い、
という現実を、日々の診療の中で感じています。
透析を受けることは、人生を続けるための治療です
私の考えの根本にあるのは、この一点です。
腎臓が悪くなっても、人生は続きます。
血液透析は、人生を続けるための治療です。
ですから、
食事を「我慢すること」だけが目的になってしまい、
人生の楽しみをすべて失ってしまうのは、
とてももったいないことだと思っています。
栄養は、
・体力を保つため
・筋力を落とさないため
・日常生活を続けるため
に必要です。
透析が始まっても、体力があれば、
仕事を続けることもできますし、
自分のやりたいことを楽しむこともできます。
カロリーはしっかり取ること。
食べることを怖がりすぎないこと。
これも、とても大切です。
ただし、カリウムだけは例外です
ここで一つだけ、
はっきりとお伝えしたいことがあります。
カリウムだけは、命に関わることがあります。
血液検査でカリウムが高いと言われている方、
カリウムを下げるお薬を飲んでいる方は、
カリウムを大量に摂ることだけは、どうか避けてください。
これは、
「少し多かった」ことよりも、
「一気にたくさん摂る」ことが問題になります。
例えば、果物を短時間にまとめて大量に食べる、
といった場合です。
怖がらせるつもりはありませんが、
本当に大切なことなので、
この点だけは、あえて強く書いています。
それ以外は、調整できることが多いのです
一方で、
塩分やたんぱく質、リンについては、
調整する余地があることがほとんどです。
塩分を摂りすぎれば、
むくみや体重増加として現れます。
もし本当に大量の塩分摂取によって心不全になれば、
息苦しさなどの体調変化に必ず気づきますし、
病院に来れば治療ができます。
たんぱく質やリンの摂りすぎは、
血液検査で分かります。
食事療法だけでなく、
お薬を使うという選択肢もあります。
カリウム以外は、
相談しながら、修正しながら進める時間があります。
食事指導を行うスタッフの立場について
透析スタッフや管理栄養士も、
食事療法がとても難しいものであることは、よく分かっています。
それでも、ガイドラインや医師の判断に基づいた指示がある以上、
現場ではその内容に沿って指導を行わざるを得ない立場にあります。
その背景には、
患者さんの安全を守り、
少しでも長く安定した透析生活を続けていただきたい、
という共通の思いがあります。
決して、できないことを責めたり、
理想を一方的に押しつけたりしたいわけではありません。
患者さんのことを思っての指導である、
ということを知っていただければと思います。
食べることは、人生の楽しみです
食べることは、
人生の大きな楽しみの一つです。
治療のことばかり考えて、
食べることを楽しめなくなってしまうのは、
私はとても残念に思います。
完璧を目指す必要はありません。
「ほどほどに」
「極端にならない」
「困ったら相談する」
それで十分だと思います。
なお、ここまで
「食事療法を100点満点で続けることは難しい」
と書いてきましたが、
食事療法をしなくてよい、という意味ではありません。
その点は、どうか誤解しないでください。
具体的な食事内容については、
管理栄養士やスタッフに相談してみてください。
おわりに
血液透析を受けている方も、
これから透析が必要になるかもしれない方も、
一人で抱え込まなくて大丈夫です。
食事療法は難しいものです。
できない日があっても、
それは人として自然なことです。
私たちは、
その現実を前提に、
一緒に考えていきたいと思っています。
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廣瀬 弥幸
