透析になっても仕事は続けられる?働き方と実例を透析医が解説
透析になったら仕事は続けられるのか、
というご相談はとても多くあります。
「透析になったら、もう働けないのではないか」
そう不安に感じる方は少なくありません。
これはご本人だけでなく、
ご家族にとっても本当に大きな不安だと思います。
結論からお伝えすると、
多くの方が、工夫しながら仕事を続けています。
今回は、これまで出会ってきた患者さんの例をもとに、
透析と仕事についてお話しします。
慢性腎臓病は「国民病」
他の記事でもご紹介したように、
日本には慢性腎臓病に当てはまる方が約1,300万人、
成人の約8人に1人いるといわれています。
慢性腎臓病は、決して珍しい病気ではありません。
多くの場合、ゆっくりと進行し、
腎臓の働きが大きく低下すると透析が必要になります。
そのため、仕事をされている方が透析を受けることになる、
というケースは決して珍しいことではありません。
血液透析では仕事を続けられるか
血液透析は、週に3回、1回あたり4〜5時間程度の治療を行います。
一般的には、月・水・金、または火・木・土といったスケジュールで行われます。
お仕事をされている方の場合、
夜間透析を選ばれることも多くあります。
夜間透析では、17〜18時頃に開始し、
22〜23時頃に終了することが多いです。
【夜間透析の場合のスケジュール】
夜間透析の例:日中は仕事、夜に透析を行うパターンです。平日の日中を仕事にあて、土日を完全に自由に過ごすことができます
当院でも夜間透析を行っており、
この時間帯に合わせて仕事を調整することで、
勤務を継続されている方や、
お仕事帰りにそのまま通院されている方もおられます。
職場との調整によっては、火木土の午前中に透析をして、
他の日にお仕事をするなどのケースもあります。
【火木土透析の場合のスケジュール】
午前透析の例:火・木・土の午前中に透析を行うパターンです。仕事と治療を一日おきに組み合わせるなど、体調に合わせた調整が可能です。
実際にはさまざまな形があり、
「完全に同じスケジュール」になるわけではありませんが、
工夫次第で仕事を続けている方は多くいらっしゃいます
腹膜透析では仕事を続けられるか
腹膜透析にはいくつかの方法がありますが、
標準的な方法では1日4回の交換を行います。
例えば、朝6時、昼12時、夕方18時、就寝前22時といったスケジュールです。
お仕事をされる場合には、職場と相談のうえ、
清潔な環境で交換ができるよう準備を整えます。
1回の交換にかかる時間は、
20〜30分程度のことが多い印象です。
なお、腹膜透析には1日4回交換以外にもさまざまなパターンがありますので、
主治医と相談しながら、ご自身の生活に合った方法を選ぶことが大切です。
実際にどのような仕事の方がおられるか
これまでの患者さんを振り返ると、
さまざまな職業の方がおられました。
公務員、会社員、個人商店の経営者、
専門職、医療・介護職の方、夜勤をされている方もおられました。
長時間運転される方、体力を使う仕事の方、
漁業や農業に従事されている方、
芸術活動をされている方もおられました。
もちろん、ご年齢や体調により退職された方もおられますが、
転職や勤務調整を行いながら仕事を続けておられる方も多くいらっしゃいます。
職場から見た考え方
では、職場の側はどのように考えるのでしょうか。
例えば当院では、「職員がイキイキと働けること」を大切にしています。
大切な職員が病気になったとしたら、
時間調整などの配慮を行い、できるだけ仕事を続けられるよう支援します。
すでに経験を積み、仕事に精通している方、
人柄が分かっている方が職場に残ることは、職場にとって大きな価値があります。
また、現在は人手不足の時代です。
体調に合わせて働いていただくことは、職場にとっても大切なことです。
さらに、最近では「障害者手帳」や「自立支援医療(更生医療)」
といった制度的な支援もあり、
働き続けるための環境は整えられつつあります。
職場の方やご家族へ
透析を受けていても、それ以外の時間は体力に応じて仕事を続けることができます。
透析中や透析後には、疲れを感じることがあります。
ただし、その程度には個人差があります
(透析の負担についてはこちらの記事もご参照ください)。
周囲の理解や配慮があることで、仕事を続けることは十分に可能です。
そして、仕事を続けることは、生活のリズムや心の安定にもつながります。
その方の体調や気持ちに寄り添いながら、支えていただければと思います。
※ご家族としての関わり方に悩まれている方は、以下の記事もご覧ください
・腎臓病や透析の患者さんを、家族はどう支える?|無理をしない関わり方を専門医が解説
・透析と介護は両立できる?家族の1週間スケジュール例を医師が解説
・透析を受けている方は介護施設に入所できる?|ご家族が知っておきたい現実と対応
さいごに
以前、「透析になっても人生はある」という記事を書きました。
人生の中で、仕事は大きな意味を持つものです。
透析になったからといって、仕事をあきらめる必要はありません。
工夫をしながら、周囲の理解を得て、
少しでも充実した生活を送っていただきたい。
透析になっても、自分らしく働き、
生活を続けていくことは十分に可能です。
そうした生活を送っていただけることを、心から願っています。
透析や治療について考える前の段階で、
「腎臓の数値がどのくらいなのか」を確認することも大切です。
【参考記事】
透析は本当につらい治療なのか ――透析医として患者さんを見てきて思うこと――
透析と言われたらどうすればいい? ――準備と考え方を腎臓内科医が説明 ――
透析を始めるときの流れ|入院・通院・不安について透析医の視点でお話しします
シャント手術の入院期間はどれくらい? ――人によって違う理由を医師が解説――
シャントはいつ作る? 血液透析を始める前に知っておいていただきたい時期の話
シャントを作ったらいつ透析? 血液透析を始めるタイミングを腎臓専門医が解説
透析患者さんこそ、旅行を楽しんでください ――透析医からお伝えしたい「旅行透析」の話――
【私がこの治療で大切にしている考え】
私がこの治療で大切にしている考えについては、
こちらの記事でも、少し詳しくお伝えしています。
【よく読まれています】
腎臓病と透析についてまとめたページはこちら
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廣瀬 弥幸
