透析は本当につらい治療なのか ――透析医として患者さんを見てきて思うこと――
透析と言われて、不安な気持ちでこの記事を読んでおられる方や、
ご家族のことで調べておられる方もいると思います。
診療をしていると、
「透析はつらいですよね」
そんな言葉を聞くことがあります。
透析という治療に対して、
強い不安や恐怖を感じる人が多いのは、無理もないことだと思います。
では実際のところ、透析は本当につらい治療なのでしょうか。
私の答えはいつも同じです。
「かなり、人によります。」
ここでは、透析のつらさと実際についてお話したいと思います。
体調について
透析のあとに体がきついという話を聞いたことがある人は多いと思います。
透析に特徴的な要因としては、
・透析の間に余分な水分を取り除くこと
・血圧が下がり、きつく感じることがあること
・透析の間はベッドの上で過ごし、動けないこと
などが挙げられます。
ただし、透析後の体調は人によってかなり違います。
比較的若い方や、体力のある方では、
「透析のあとも特に問題ありません」とおっしゃる方もおられます。
体力の必要な仕事を続けている方や、運動をされている方もいます。
一方で、ご高齢の方や体力が低下している状態の方では、
透析中からきつさを感じたり、
透析の後は帰宅後に休んで過ごすという方もおられます。
透析の日の過ごし方も人それぞれで、
午前中は家で家事などをして過ごし、
午後から透析に来られる方もおられます。
このように、体力、年齢、合併症、仕事などによって、
透析の感じ方は、本当に人それぞれです。
年齢や体力の影響が大きいという点では、透析に限らず、他の病気と同じ面もあると言えるかもしれません。
気持ちについて
透析を受けておられる方の中には、
・透析を受けないと命に関わる
・医療によって生きている
と感じておられる方もいます。
また、合併症などについて怖い話を聞いて不安を感じている方もおられます。
以前、ある患者さんが、
「透析の日は透析のことを考えています。透析じゃない日も透析のことを考えています」
と話してくださいました。
透析をしていない時間には、できれば人生を楽しんでいただきたいと思っていた私にとって、この言葉はとても印象に残りました。
医療者から見ると、
患者さんはそのような気持ちをあまり表に出しておられないように見えることもあります。
しかし実際には、
ご自分の中で気持ちの折り合いをつけたり、
ご家族や友人に話をしたりしながら過ごしておられるのではないかと思います。
私たち医療者の立場から見ていると、透析を受けていくうちに、
だんだん緊張がほぐれて、笑顔が見られたり、
世間話をしてくださるようになったりする方も、少なくありません。
気持ちの負担がなくなるとは言いませんが、
多くの方が、少しずつ透析のある生活に慣れていかれるように感じています。
私たち医療者は、患者さんがいろいろな気持ちを持っておられことを、
いつも心に置いておかなければならないと思っています。
経済的な負担について
透析は医療費のかかる治療ですが、
日本では公的な制度により自己負担は比較的少なく抑えられています。
透析患者さんの中には、
この制度に感謝しておられる方も多くおられます。
ある患者さんが、
「ありがたいことです。私たちはとにかく透析だけを頑張っています」
とおっしゃっていたことがあります。
透析だけが特別なのだろうか
透析には確かに負担があります。
週に3回通院し、
数時間ベッドに横になる必要があります。
時間も体力も使います。
しかし、よく考えてみると、
人生の中で時間や体力が限られることは、透析だけの話ではありません。
誰でも年を取り、
誰でも病気をします。
仕事ができなくなる日も来ますし、
体力が落ちる日も来ます。
そう考えると、
透析によって制限がある人生も、
多くの人の人生と重なる部分があるのかもしれません。
また、通院の時間や生活のリズムについても、
最初は戸惑うことが多いのですが、次第にその方なりのリズムができてきて、
習慣として生活の中に組み込まれていくことが多いように感じています。
透析という「コスト」
透析には、
通院の時間、治療の時間、
体力の消耗もあります。
しかしそれは、
生きていくためのコスト
とも言えるのではないかと思います。
そのコストを払うことで、
人生の時間が続いていく。
私はそう考えています。
実際、透析を受けながら仕事を続けている方や、
趣味や家族との時間を大切にして過ごしている方も多くおられます。
人生の意味は仕事だけではない
透析患者さんの中には、
仕事を続けている方も多くいます。
それはとても素晴らしいことです。
しかし、もし仕事ができなくなったとしても、
それで人生が無意味になるわけではありません。
透析をしていなくても、
人はいつか仕事を離れる時期が来ます。
そのとき大切なのは、
どうすれば意味のある時間を過ごせるか
だと思います。
医師は制限するだけの存在ではない
医師はどうしても
食事制限
水分制限
生活指導
などを伝える立場にあります。
そのため、
「うるさいことを言う人」
と感じられることもあるかもしれません。
しかし私は、
制限するだけの存在ではいたくない、
と思っています。
もし患者さんが
「こういう人生を送りたい」
「こういうことを大切にしたい」
と考えているなら、
その中で
どうすれば治療と両立できるか
を一緒に考えたいと思っています。
最後に
透析は確かに負担のある治療です。
しかし、それによって人生が終わるわけではありません。
むしろ、
その時間をどう使うか
が大切なのではないでしょうか。
透析という治療を受けながらでも、
意味のある人生を送ることはできます。
私はそう思っています。
そして、そのような人生を歩んでおられる方を、
私はこれまでたくさん見てきました。
そのことを、このお話の最後にお伝えしておきたいと思います。
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廣瀬 弥幸
