eGFR:20を切るとどうなる?|症状・治療・透析準備を専門医が解説
「eGFR:20を切るとどうなるのか」は、不安の中で多くの方が知りたいと思われるテーマです。
この数値は、腎臓病の経過の中でも大きな節目の一つです。
「eGFR:20を切った」「eGFRが20と言われた」
といった状態は、
腎不全が近づいているサインと考えられます。
「いよいよ透析なのではないか」「透析だけは避けたい」と、
不安が強くなる時期だと思います。
この段階は、
「今すぐ透析が必要」という状態ではありません。
しかし一方で、
これから透析のことを現実として考え始める時期
に入っていることも確かです。
ここでは、eGFR20という時期に何が起きているのか、
そしてこれから何を考えていくべきかをお話しします。
一般的にeGFR:15未満が末期腎不全とされます。
※もう少し早い段階(eGFR30前後)の考え方はこちら
eGFR:20とはどういう状態か
eGFRの正常値は90以上です。
20を下回るということは、腎臓のはたらきがかなり低下している状態です。
eGFR:15未満になると透析が必要になる段階に近づきます。
つまりeGFR:20は、
その一歩手前の時期
と考えることができます。
eGFR:20で起きている体の変化
この頃になると、少しずつ症状が出てくることがあります。
- 足のむくみ
- だるさ(倦怠感)
- 食欲が落ちる
- 味がわかりにくい
ただし進行はゆっくりです。
そのため、症状に慣れてしまっている方も多く、
ご自身では変化に気づいていないこともあります。
「年齢のせいかな」と感じてしまうことも少なくありません。
長崎では「どうもなかよ」とおっしゃる方もおられますが、
体の中では確実に変化が進んでいます。
検査で見えてくる変化
血液検査では、次のような変化が見られます。
- カリウムが高くなる
- リンが高く、カルシウムが低くなる
- 血液が酸性に傾く
- 老廃物がたまる
- 貧血が進む
そのため、
- 利尿剤
- カリウムを下げる薬
- リンを下げる薬
- 重曹
- ビタミンD
- 貧血の治療
など、薬が増えてくる時期でもあります。
人によりますが、腎臓病や腎臓が悪くなったときの症状でもご説明しているように、
腎臓のはたらきを薬で補うことになるため、
かなり薬の種類が多くなります。
それでも生活できてしまう
eGFR:20の特徴は、
「状態は悪いが、生活はできてしまう」
ことです。
- 薬が増えた
- 少しだるい
その程度で済んでしまうことも多く、
透析という重い言葉と、現実が結びつかず、
自分のこととして真剣に考えるに至らない、
という方も少なくありません。
ここでの選択肢(とても重要です)
この時期は、今後の治療を考える段階に入ります。
- 血液透析
- 腹膜透析
- 腎移植
大切なのは、
今すぐ決めることではなく、考え始めること
です。
どれか一つが絶対に正しいということではありません。
その方の生活や価値観に合った治療を選んでいくことが大切です。
実際にはどう決まっていくことが多いか
実際の現場では、
- 最初は透析を受け入れられない
- 症状が出てきたり、数値の変化が進んだりして考え始める
- いよいよ腎機能が悪化して、専門医から時間がないと言われる
最終的には、決めざるを得ないタイミングで透析を選択されるという方が多いです。
しかし、これは自然なことだと思います。
透析について考える時期は、
「治療を受けるかどうか」だけでなく、
「これからどう生きていくか」を考える時期でもあります。
SDM(共同意思決定)については、
以下の記事でも詳しくお話ししています。
→ 透析をするかどうか迷ったときに|専門医と一緒に考える「これからの人生」(SDM)
腎機能はどうなるのか
この段階では、
治療をしっかり行っていても、徐々に低下することが多い
です。
この時期になると、薬の内服や食事療法などを
これまで以上に一生懸命がんばる方が多いです。
それでも数値が下がってしまい、
「こんなに頑張っているのに」と
自分を責めてしまう方がおられます。
しかしそれは、
治療の問題ではなく、病気の性質によるものです。
ご自分を責める必要はありません(こちらの記事もご覧ください)。
とはいっても、少しでも低下を緩やかにする方法はあります。
腎臓を守るために自分でできる7つの習慣にまとめていますので、ご覧ください。
透析の準備について
eGFR:20になると、
透析の準備の話が現実的になります
例えば血液透析では、
- シャント作成後、使用まで約2週間
- うまくいかない場合は再手術が必要になることもある
ため、早めの準備が重要です。
なぜ「早め」が大事か
実際の経過の違いを、2つの例でご説明します。
【症例A】70代の男性。eGFR:20。
透析について決めていないまま経過していましたが、
風邪をきっかけに肺炎と心不全を起こし、救急搬送となりました。
腎機能が悪化して、そのまま緊急でカテーテルから血液透析を開始しましたが、
カテーテル感染を起こし、入院が長引きました。
結果として、約1か月の入院で体力が落ち、
ご自宅には直接戻れず、施設での生活となりました。
【症例B】70代の女性。eGFR:20。
透析を見据えてシャント手術を行い、短期入院で退院しました。
その後外来で経過をみていましたが、腎機能が低下したタイミングで、
シャントから血液透析を開始しました。
入院は短期間で済み、その後はご自宅から通院を続けておられます。
このように、準備が遅れると、
- 入院が長くなる
- 体力が落ちる
- 元の生活に戻れなくなる
- 感染症や出血などの合併症を起こしやすくなる
ことがあります。
透析は、「始める前後」がとても大事な時期です。
ここをうまく乗り越えられるかどうかで、
元の自宅での生活に戻れるか、
戻れずに施設に入所になってしまうのか、
その後の生活が大きく変わります。
透析という治療について
透析と聞くと、
- つらい
- 人生が終わる
- 縛られる
というイメージを持たれる方が多いと思います。
しかし実際には、
初めて透析を受けたあと、
「思ったより大丈夫だった」「なんともなかった」とおっしゃる方も多いです。
また、症状が強くなってから始めた方ほど、
「もっと早く始めればよかった」と感じることもあります。
人生の話
この時期は、
治療の話であると同時に、「人生の話」でもあります
- どんな生活を送りたいか
- 何を大切にしたいか
- 自分が本当にしたいことは何か
これは、
医療者が決めるものではありません
あなたとご家族が決めるものです
透析はゴールではなく、人生を支えるための治療であり、
目的そのものではありません。
透析があるという状況の中で、
ご自身の人生を再構築していくことが大切です。
行動のポイント
大切なのは、一人で決めないこと。
透析という重い現実と、辛いお気持ちでは、
自分一人では新しい人生を考えることは難しいからです。
- ご本人
- ご家族
- 介護の方(ケアマネジャーなど)
- 職場の方
- かかりつけ医
- 腎臓専門医
と一緒に考えていくことが重要です。
※ご家族としての関わり方に悩まれている方は、こちらの記事もご覧ください
腎臓専門医が考えていること
私はたくさんの患者さんの透析開始を見てきました。
透析はやむを得なくても、その後に人生があることを知っています。
よりよい人生になることを願っています。
eGFR20は透析の準備をする時期にありますが、
患者さんにとって、これを決めることは大変なことです。
しかし、体調が悪化してから透析を始めるのではなく、
体調が大きく崩れる前に治療法を決め、準備を行い、
強い症状が出る前に透析を開始すること。
そして入院期間を短くし、元の生活に戻れるようにすること。
私は、それが長く安定して透析のある人生を送るために
とても大切だと考えています。
透析導入前に体調を崩して入院が長引くと、
退院時に歩けない、自宅で生活できない、
施設入所が必要になる、ということもあります。
しかも、透析患者さんを受け入れられる場所は多くありません。
自宅で生活できることは、とても大きな価値です。
そうならないために、
私たちは計画的に透析を始めることをお勧めしています。
※eGFRがさらに低下した場合については、
「eGFRが10になったら」の記事でも解説しています。
最後に
eGFR:20という時期は、
「まだ時間がある最後のタイミング」
です。
- 急がなくていい
- でも、先送りにはしない
この時期をどう過ごすかで、
その後の生活は大きく変わります。
このタイミングで考え始めることが、その後の安心につながるのです。
私たちは、その時間を一緒に考えていきます。
【診療案内】
以下のような方は、一度ご相談ください。
・eGFRが低い(45未満など)と指摘された方、
またはご自身で数値が気になっている方
・たんぱく尿や血尿を指摘された方
・透析が必要と言われたが、まだ迷っている方
まずはご相談だけでも構いません。
→ 広瀬クリニックの診療案内
初めて受診を検討されている方はこちらをご覧ください
→ 初めての方へ
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廣瀬 弥幸
