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新型コロナウイルスから考える「感染症に強いまちづくり」

[2020.04.20]

 新型コロナウイルス感染が広がってきています。新型コロナウイルスに感染しても症状が全くない方もおられますし、また感染して症状が出る場合でも、症状が出現する前から他の人に感染させることが報告されており、これらのことが地域での感染対策を難しくしていると考えられます。

 

【院内感染対策チームと診療所の現状】

 医療では院内感染対策は最も重要な課題の一つであり、様々な取り組みが行われてきました。保険診療では感染防止対策加算という加算も設定されており、医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師などによる多職種によるチームが作って対策を行うことが要件となっています。具体的には、院内感染状況の把握、抗菌薬の適正使用、感染防止策の策定、感染対策の教育等を行うことで、院内感染の防止を行っています。また、この取り組みをしている複数の医療機関が連携し、互いに感染防止対策に関する評価を行って改善を図る制度もあり、このようにしてチームによる感染対策が進められてきました。

 

 一方、感染症を専門とする医師の数は、例えば感染症専門医は1564人(2020年1月22日時点)、Infection Control Doctorは9362人(2019年1月時点)となっており、重複して両者を持っている医師もいます。それに対して病院数は2019年3月時点で国内に8389、診療所数(入院病床がない、あるいは19床以下)は10万1860あります。このように、医療機関数からすると感染症を専門とする医師は多いとは言えません。

 

 病院では院内感染対策チームが作られているところが多いのですが、診療所では人員に制限があることもあって、病院ほどではありません。診療所では一般に職員数が少なく、ハード面や経済面などに制約があるため、個別な院内感染対策が必要です。感染症を専門とする医師がいないことも多いため、それぞれの医師は自分の専門の他に感染症についての勉強・対策をし、知識をアップデートしなければなりません。現在は感染症対策がクローズアップされていますが、感染症対策以外にも、医療安全や認知症対策、在宅医療、診療所の経営や運営など、少ない医師(あるいは一人の医師)で多くの重要課題に取り組む必要がある、という実情があります。

 

【広瀬クリニックでの感染対策】

 広瀬クリニックでは感染症専門の医師はいないため、外部からの協力を得て感染対策を行う必要があると考え、長崎感染制御ネットワークと共に感染対策を進めてきました。長崎感染制御ネットワークは、長崎県が長崎大学病院感染制御教育センターに運営を委託しているもので、感染対策に関する研修会、院内感染に関する情報収集、日常あるいはアウトブレイク時の相談支援、サイトビジット(他医療機関への訪問)などを行っています。

 

 これまでサイトビジットの対象は病院のみだったそうですが、2017年より年に1回、広瀬クリニックにも来ていただいています。これまでに感染症が専門である泉川公一教授、田中健之先生、田代将人先生、感染管理認定看護師である志岐直美さんおよび寺坂陽子さんにおいでいただき、実際に当院の現状や対策を見ていただいて、当院の状況に応じた対策を相談し、改善を図ってきました。今回の新型コロナウイルス感染症についても情報を共有し、時にアドバイスをいただきながら対策を進めています。

 

 医療が進歩して専門領域が細分化されていく中で、多くの領域の専門人材を全ての医療機関に配置することはできません。長崎感染制御ネットワークの取り組みは組織の壁を超えた人材共有と見ることができ、地域の医療機関の感染対策の標準化に寄与し、有事において顔の見える関係で力を合わせて対応するための重要な基礎になっています。

 

【地域の感染対策の在り方】

 今回の新型コロナウイルス感染症の広がりから、医療機関の外での感染対策も極めて重要であることは明らかです。医療者の多くが医療機関の中で活動していますが、新型コロナウイルス対策のためには、地域全体の視点での感染対策が必要だと思います。

 

 また、日本がこれまでに他の国ほど感染する方や亡くなる方が多くなかったのは、手を洗う習慣があるからではないか、マスクをつけることが比較的多いからではないかと言われています。このような習慣、あるいは感染症への認識も、感染症の防止に関係することが考えられます。

 

 そのためには平時から、感染症専門家を含めた様々な職種によって作られた組織があって活動することが必要です。この組織がある程度の権限を持ち、感染症対策のルールを作り、地域のいろいろな人びとや業種の方に知っていただく。様々な医療機関で感染症対策に関わっている医療人は、医療機関の外でも感染症対策に取り組む。診療所の実情と同様に、それぞれの業種や事業所には様々な事情があり、歴史があり、すでに取り組んでこられた感染対策がありますから、ルールを知ったうえで現実的で実効的な対策を個別に考えていくことになるでしょう。この過程の中で、地域の皆様に感染対策に対する共通認識や習慣ができ、標準的な感染対策を実行することができ、お互いの顔がわかって困った時に相談ができる、有事の際に団結して対処できる、そのような「感染症につよいまち」ができればいいと思います。

 

 新型コロナウイルス感染症はまだまだ対策が大変ですが、いつか終息する日が来るでしょう。しかし長い目で見れば、今後もパンデミックは繰り返し起きますから、「感染症に強いまちづくり」を推進して、長期的に備えることが望まれます。

 

【感染対策の動画のご紹介】

 最後に、長崎大学病院感染制御教育センターが作成した感染対策の動画をご紹介いたします。地域や医療機関、事業所などで体制や対策は異なるところがあると思いますし、また対策はアップロードされていきますので、その点はご注意ください。感染症対策の標準化につながり、皆様の一助になれば幸いです。

 

新型コロナウイルス感染症に対する個人防護具の適切な着脱方法

~医療従事者が新型コロナウイルス感染症に感染しないために~

http://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/kouhou/topics/2020/3/1/

 

福祉・介護施設における新型コロナウイルス感染症の対策

http://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/kouhou/topics/2020/3/3/index.html

 

※長崎大学病院感染制御教育センター 泉川公一教授に掲載の許可を得ております

 

 

【参考】

Temporal dynamics in viral shedding and tranmissibility of COVID-19. Nat Med. 2020 Apr 15.

厚生労働省資料

日本感染症学会

ICD制度協議会

長崎感染制御ネットワーク

 

医療法人陽蘭会 広瀬クリニック 

理事長・院長 廣瀬 弥幸 

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