メニュー

血液透析のシャントを作る時期

[2020.05.06]

 以前書きましたように、血液透析を行うためには、動脈と静脈をつないだシャントが必要になります(血液透析にシャントが必要な理由)。

 どなたでも透析は避けたいとお考えだと思いますが、血液透析では、十分な血液の流れがあって使いやすいシャントがあることは、とても重要なことです。

 新型コロナウイルス感染が問題となっている現在、不要不急の受診や手術は控えたり遅らせたりすることもありますが、ここでは血液透析を開始する場合の「シャントの手術のタイミング」について述べたいと思います。

 

【シャントの種類と準備】

 ご自分の腕の動脈と静脈を手術でつないだシャントは「自己血管使用皮下動静脈瘻(AVF:arteriovenous fistula)」と呼ばれ、日本の透析患者さんでは約89%の方がAVFでの血液透析を受けておられます。血管が細いなど、何らかの原因でご自分の血管でシャントが作れない場合には、人工血管(ゴムの管のようなもの)を使った「人工血管使用皮下動静脈瘻(AVG:arteriovenous graft)」であったり、カテーテル(点滴の管)を血管の中に入れておくことによって透析をしたりすることもあります。

 ここではAVFのことを「シャント」と書きます。通常、シャントは手術直後には透析に使用しません。これは、手術後徐々に血管が発達してシャントの血液の流れがよくなるのを待つためで、ガイドラインでは初めてのシャントでは術後2週間以降に使い始めることが望ましいとされています(状況によっては2週間以内に使い始めることもあります)。

 以下に、血液透析を始めてからシャントを作る場合と、事前にシャントを作っておく場合を比較してみます。

 

【血液透析を始めてからシャントを作る場合】

 シャントの手術をしていない状況で、「今日か明日には透析が必要」という状況になったら、その後の治療はどうなるでしょうか。

・入院して、カテーテルを血管の中に入れることで血液透析(一般的には週3回)を始めます

・シャントの手術の予定を立て、手術を行います:患者さんの体調や血液透析の日程、手術される先生や手術室のスケジュールなどによって日程が決まります

・手術後2週間程度たってから、シャントに針を刺しての血液透析を開始します

・シャントは血液の流れがとてもよいので、針を抜いた後の止血に慣れる必要があるため、数回(例えば3回程度)血液透析をしてから退院することになります。

 方法や期間は医療機関によって様々だと思いますが、ここに書いた例ですと、おおよそ1か月の入院が必要になります。

 

【事前にシャントを作っておく場合】

・血液透析をせずに、シャントの手術だけを行います:医療機関によって様々ですが、当院では通常1泊2日の入院で行っています

・シャントの手術はしても、腎臓のはたらきや症状等に問題なければ、血液透析を始める必要はありません。これまで通り主治医の先生とご相談しながら外来通院で治療を続けていきます。この期間は1ヵ月~1年など、それぞれの患者さんによって違います

・透析が必要と判断されたら、シャントから血液透析を始めます。針を抜いた後の止血に慣れる必要はありますので、例えば3回血液透析をしてから退院するのであれば、おおよそ1週間の入院が必要ということになります。

 

【事前の計画的なシャント手術の利点】

 このように、事前にシャントを作っておくと入院期間が短くなります。

 シャント手術をしても、血液の流れが十分でないために再手術などが必要となってしまうことが時にはありますが、血液透析を開始してからシャントを作った場合に再手術となると、さらに入院期間が延びてしまいます。

 カテーテルを入れて透析を行う場合は、カテーテルが入っている部分から細菌が入って高い熱が出ることがありますが、事前にシャントを作っておけばその可能性もないことも大きな利点です。

 事前にシャント手術を受けておいて、計画的に血液透析を始めて行くことを「計画導入」と呼びますが、現在ではできるだけ計画導入を行うようにしています。

 

【ガイドラインでのシャント手術の時期】

 それでは、どのようなタイミングでシャントの手術を考えればいいでしょうか。

 シャントが十分に発達して使用可能になる時間が必要であるため、ガイドラインでは

・eGFR(推算糸球体濾過量) が 15 mL/min/1.73 m2以下と、臨床症状を考慮し、シャントの作製時期を判断することが推奨される

・溢水傾向を示しやすい糖尿病性腎不全では、より高値のeGFR でシャントを作製することが望ましい

とされています。

 eGFRはクレアチニン・年齢・性別により計算される値ですが、15 mL/min/1.73 m2にあたるのは、例えば

・70歳の男性では、血清クレアチニンが3.40 mg/dl

・70歳の女性では、血清クレアチニンが2.60 mg/dl

 くらいです。意外と早い時期に透析のことやシャントのことを考えるのだな、と思われるかもしれません。

 

※ガイドラインではシャントでなくVascular Access(VA)という言葉で書かれています。VAにはシャントの他、カテーテル等の方法も含まれます

 

【新型コロナウイルスの影響を考えたシャント手術の時期】

 新型コロナウイルスの流行下であっても、個人的には、シャント手術の時期についての考え方自体は同じだと考えます。

 入院日数が短い方が、患者さんにはもちろん、新型コロナウイルスに対応している医療機関にも負担が少ないと考えられます。また、やむを得ず予定手術を遅らせる対応をしている医療機関もありますので、少し早めにシャントのことを検討したり、手術前の診察を受けるタイミングを考えたりすることには、メリットがあると思います。

 大変な状況ではありますが、できるだけ計画的にシャント手術を受け、シャントを使って負担が少なくスムーズに血液透析が開始できた方がよいと考えます。

 

【ご注意】

 ここで書かせていただいた内容には私の意見が含まれています。一人ひとりの患者さんの状況や経過や各地域の医療提供体制等は異なりますので、実際にシャントの手術を考える場合には、主治医の先生とよくご相談するようになさってください。

 

【参考資料】

2011 年版社団法人日本透析医学会 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン

 

医療法人陽蘭会 広瀬クリニック

理事長・院長 廣瀬 弥幸

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME