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診療情報管理士について

[2020.12.14]

 私は2011年に長崎大学病院の診療情報管理室長になり、この時に初めて診療情報管理士という資格を知りました。

 医療の現場では、診療が行われていくなかで、様々な診療情報が収集されています。医療の高度化や複雑化などのため情報量は多くなり、情報の共有や分析・活用がより重要となってきています。このような業務を担う専門職種が診療情報管理士です。

 私も2013年に診療情報管理士の資格を取得しましたが、通信教育や試験では、医師として仕事をしているだけでは知ることのできないことをたくさん学ぶことができました。ここでは診療情報管理士についてご紹介いたします。

 

【診療情報管理士の役割】

 診療情報管理士にはたくさんの役割がありますが、代表的なものをご紹介いたします。

 

①診療情報の管理

 医療機関を受診した場合、必要な情報が収集され、それがきちんと保管されていることは、基本的でかつ大変重要なことです。例えば、ある薬に対するアレルギーがある場合、アレルギーの記録があって、その薬を避けることができることは医療の安全に重要です。薬害肝炎では、出産や手術での大量出血などの際のフィブリノゲン製剤・血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与によって肝炎ウイルスに感染された方に対して給付金が支給される仕組みがありますが、通常は薬の投与があったことをカルテなどの診療情報で確認します。診療情報管理士には、各種規定などに従って診療情報をきちんと管理する役割があります。

  

 

②診療情報の点検

 入院したり手術を受けたりする場合などでは、説明の上で同意書をいただくことが重要です。また、医療機関を運営していくためには、診療に関わる書類で、適切に作成・保管することが定められているものが多数あります。このような書類が適切に作成・保管されているかの点検業務も、診療情報管理士に求められています。

 

③個人情報保護

 診療情報はとても個人的で機微な情報ですから、自分の診療情報が漏れてしまうと大変困ります。一方、他の病院に紹介してもらう場合には、適切に情報を伝えてもらうなど、伝えてもらいたい情報はきちんと伝えてもらう必要があります。また、診療情報が誤って捨てられてしまうのも困ります。個人情報の保護に関する法律などに基づき、個人情報をしっかりと保護することも診療情報管理士の仕事です。

 

④病気の分類(コード化)

 同じ病気でも、その名前の表現が複数ある場合があります。例えば、「C型肝炎」「慢性C型肝炎」「C型慢性肝炎」などのことで、その他に医師が英語で書いている場合もあります。このような表現の違いがあると、例えば「日本にC型肝炎の患者さんが何人おられるかを集計して他の国と比較する」などの時に困ることになります。そのため、国際保健機関(WHO)が作っているのが国際疾病分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems:ICD)で、C型肝炎はICD-10のコードで表現すると「B18.2」となり、このようにコード化することで集計しやすくなります。これを元に日本の死因統計が作られ、政策にも反映されます。また、国際的な比較ができるようになります。コーディングには知識が必要であり、診療情報管理士の主要な業務の一つです。

 一方、WHOは病気の分類以外にも様々な分類を作っています。例えば、「歩けるか」「自分で食事をとることができるか」といった生活する上での機能の分類として、国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)が作られています。2001年に作られたものですが、未だに現場での具体的な活用はされていません。日本は高齢化が進んでおりますので、私は病気の情報だけでなく生活機能の情報も大変重要であると考えています。今後ICFが医療や介護の現場で活用されるようにするため、日本診療情報管理学会の委員会で検討を行っています(参考:これからは「生活機能」が「病気」と同じくらい重要です)

 

⑤情報活用

 診療を行って診療情報を保管しておくだけではなく、分析を行うことによって有用な知見を発見し、発信することも重要です。例えば、「脳梗塞になってA病院を受診した患者さんのうち、自宅から車で30分以内に受診できる距離の方がどれくらいおられたか」などの分析をすることができます。また、新型コロナウイルスのために様々な感染対策が行われていますが、感染対策の効果なのか、インフルエンザに感染する方が激減しており、肺炎や急性胃腸炎で入院された患者さんの数も減っていることが示されています。治療についてはもちろんのこと、国の方針に関わるような情報分析も大切で、これから特に診療情報管理士に期待されている役割です。

 これ以外にも、医療経営、医事請求業務、電子カルテなどのシステムへの対応、訴訟への対応、医療安全など、様々な業務を担う診療情報管理士がいます。

 

【診療情報管理士のこれから】

 多岐にわたる業務を担う診療情報管理士ですが、認定者数は令和元年の時点で37, 503人です。それに対して、病院数は約8300、医科診療所数は約11万ですから、診療情報管理士は多いとは言えません。個人的には、診療情報管理士は医療機関で情報の活用をどんどん行って、医療の進歩やよりよい医療の実現に努めることが重要だと考えています。現実には診療情報管理士はかなり多忙なので、情報活用の時間を作るための働き方改革も必要でしょう。

 一方、日本は最も高齢化の進んだ国であり、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、国は地域包括ケアシステムの構築を進めています。地域包括ケアシステムとは、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される、というものです。社会がそのようになっていくのですから、診療情報管理士が自分のいる医療機関だけ、あるいは医療だけを見ていては十分ではないと思います。地域の情報管理や情報活用、医療や介護の連携や情報共有の改善などを通じて、よりよい地域の実現に力を発揮すべきと考えています。

 

【私のこれから】

 私は診療情報管理士で医師でケアマネジャーということもあり、医療や介護の連携推進やICFの活用を通じて地域に貢献したいと考えています。

 ICFについては、日本診療情報管理学会 のPOS等検討委員会や国際統計分類員会で活動をしています。また、在宅医療の領域でICFについての研究を行っており、成果が出始めているところです。

 ICDについても、ICD-11への改定にあたり、主に腎臓・腎不全領域について日本診療情報管理学会に協力させていただいています。

 私は診療情報管理士の「指導者」にもなっていますし、今後もICFやICDを通じて診療情報管理に関わっていきたいと思います。

 

【参考資料】

日本診療情報管理学会ホームページ https://jhim-e.com/

出産や手術での大量出血などの際に、血液から作られた医薬品(フィブリノゲン製剤・血液凝固第9因子製剤)の投与によりC型肝炎ウイルスに感染した方へのお知らせ 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/fivwakai/index.html

 

医療法人陽蘭会 広瀬クリニック

廣瀬 弥幸

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