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国際生活機能分類(ICF)に準じた「生活機能サマリ」について日本医療情報学会で発表しました

[2021.07.22]

【国際生活機能分類について】 

 国際保健機関(WHO)は病気に分類を作っていますが、「会話ができるか」「自分の身体を洗うことができるか」などの生活機能の分類も作っています。それが国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)です。 

 ICFは、「人の生きること全体」をとらえようとするものです。「生活機能が低いから〇〇ができない」ではなく、「生活機能が低くても、少しのサポートがあれば〇〇ができる」というように、プラス面に目を向けるところに特徴があります。特に高齢化が進んでいる現在では、生活機能の重要性が高まっています。同じ病名の患者さんであっても、生活機能は人によってかなり違いがありますので、医療や介護が有効な連携をしていく上では、病名だけではなく生活機能の情報も共有されるべきです。また、生活機能の情報が蓄積されたり、分析・活用されたりすることは、国の政策などにも重要です。 

 

【国際生活機能分類の問題点】 

 ICFの考え方は、徐々に浸透してきています。しかし、実際の活用はまだあまり進んでいません。理由は大きく2つあります。 

① 分類項目数が1400以上と多いため、通常の診療や介護の場面で、全項目について評価・分類するのは不可能 

② それぞれの項目について5段階評価を行うが、その方法が難しい 

 

【我々の取り組み】 

 上記の問題を解決し、医療や介護の場面で生活機能が広く情報共有されることで医療や介護のサービスの質が向上し、患者さんによりよい人生を過ごしていただくことを目的に、活動を続けてまいりました。

 その内容が6月に米子市で行われた日本医療情報学会で発表されましたので、ご紹介いたします。 

 

【発表の概要】 

 今回の発表の概要は、以下の通りです。 

① 1400以上ある項目を、どのような健康状態でも必要と考える20項目に絞り込んだ「生活機能サマリ」を策定しました。この中には、「歩けるか」「階段の昇り降りができるか」「人との交流ができるか」などが含まれています。この生活機能サマリにより、ICFの現場での評価や活用が現実的なものとなります。 

② 評価法について、要介護認定調査票の評価方法を用いて行う方法を定めました。要介護認定調査票は現実に使われているものですので、評価をすることも現実的なものとなります。 

③ ①②について、ケアマネジャーや看護師に利用していただきました。「人が生きることの全体をとらえる」というICFの理念から「就労」などの項目が入っているのですが、高齢の方では当てはまらないとのご意見がありました。しかし全体として、項目や評価についておおむね妥当との評価を得ました 

 

【今後の展望】 

 生活機能は医療や介護などの立場を超えて活用され、共有されるべきものです。広くICFが活用されるよう、今後も取り組みを続けていきたいと思います。 

 

【謝辞】 

上記③にご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。 

 鹿児島大学病院 退院支援部門の皆様 

 千葉県市川市の介護施設のケアマネジャーの皆様 

 長崎市介護支援専門員連絡協議会の皆様 

 

【共著者のご紹介】

以下の先生方とこの発表を行いました 

 渡邉直先生(医療情報システム開発センター): この取り組みをリードしておられ、今回もご発表いただきました 

 宇都由美子先生(鹿児島大学病院医療情報部) 

 坂田薫先生(京都民医連中央病院) 

 柴山志穂美先生(埼玉県立大学保健医療福祉学部) 

 

【参考】 

第25回日本医療情報学会春季学術大会 

生活機能サマリーに向けた有用な生活機能評価の方法~ICF準拠の標準的表記を目指して~ 

渡邉直、宇都由美子、廣瀬弥幸、坂田薫、柴山志穂美 

 

院長ブログ: 

これからは「生活機能」が「病気」と同じくらい重要です 

在宅医療での「生活の質」や「ICFに基づく生活機能」などを評価した論文が公開されました 

 

医療法人陽蘭会 広瀬クリニック 

廣瀬 弥幸 

プロフィール等 

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