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腎臓病のある方での血管保護:採血や点滴での工夫

[2021.01.09]

 以前にも書きましたように、順調に血液透析をするためには良好なシャントがとても重要です。このことからすると、腎臓病のある方、中でも腎臓のはたらきが低下している方では、将来の血液透析をする可能性に備えて、腕の血管(静脈)がいい状態であるように注意をしておいた方がよいと考えていますので、ご説明したいと思います。なお、ここに書かれていることの多くは私見であることをご承知おきください。

 

【血管は傷むことがある】

 シャントを作って数年経過した後に、気づいたら肘のあたりでシャント血管が詰まってた(閉塞;その部分が流れなくなっている)ということが、時々あります。その場合、患者さんにおたずねすると「昔はこの場所でよく採血をしていた」と言われることがあります。

 広瀬クリニックではシャント手術前にエコーで血管を調べています(エコーによるシャントの管理)。ごくまれなことではありますが、まだ透析をしていない方でも、ある部分の静脈が閉塞していることがあります。これも私の経験では、肘のあたりで起きやすいようです。この場合、血液透析の準備のためにシャントを作ることになった時に、シャントを作ることができる場所が減ってしまうこともあります。

 腎臓のはたらきは血液検査をしないとわからないので、腎臓病がある方では定期的に血液検査をすることが多いです。その時に、静脈の同じ場所に繰り返し針を刺すことでその部分の静脈が傷み、後に静脈が閉塞してしまったり、細くなってしまったりする(狭窄)原因の一つなのではないか、と考えています。誰でも透析はしたくありませんが、もしも将来血液透析が必要になってしまった場合のことを考えると、特に腎臓のはたらきが弱っている方では、できることであれば静脈が傷みにくいように工夫することが望ましいと思います。

 

【血管保護の具体例】

 静脈に針を刺す機会には採血や点滴があります。通常、同じ場所を数回刺しても問題とはなりませんが、長年にわたって同じ場所を何度も何度も繰り返し刺すことで血管を傷めてしまうかもしれないという考えから、広瀬クリニックではシャントのことを考えた血管保護として、以下のような工夫をしています。

・採血や点滴は手の甲の静脈から行う

 ※広瀬クリニックでは手の甲の静脈を使ったシャント手術はしていないためです。なお、手の甲の、親指側の静脈を使って手術をされる先生もおられます

・手の甲以外から採血や点滴をする場所は、同じところに集中しないように、場所を変えながらしてもらう

 ※例えば採血できる場所が3か所あったら、順々にローテーションすると、それぞれの場所の採血の回数が1/3に減ります

 など

 

【血管保護についてのご注意】

 ここにご説明している血管の閉塞は、私の経験では患者さん十人について一人にも起きないような、比較的少ないことです。「もしできるなら血管を保護してください」というお話であって、絶対にしなければならないということではありません。静脈の様子は個人差があり、「この場所でしか採血ができない」という方もたくさんおられますから、そのような場合に同じ場所を繰り返し刺すことは、やむを得ないことです。

 一方、看護師さんなどの「針を刺す人」の都合や気持ちも重要です。「この場所以外では難しいな・・・」と思う場合もありますし、私も含めて「ここで必ず採血してください、失敗しないでくださいよ」とプレッシャーをかけられると、逆に難しくなることもあります。手の甲は痛みが強いのではないかと心配してあえて手の甲を避けようと考えることもあります。

 また、患者さんの腎臓のはたらきが低下しているかどうかを知らずに採血をする場面は現実にはよくありますし、シャントのことで血管の保護が望ましいことは、腎臓病の診療や透析医療に関わっていない医療者にはそれほど知られていません。

 腎臓病のある方、特に腎臓のはたらきが低下している方が血管の保護を考える場合は、患者さんご自身から、腎臓のはたらきが低下していることを針を刺す人に伝えていただいて、「できれば手の甲の血管を使ってほしい」「必ずというわけではないけれども、もしできるならば今月は別の場所で採血してほしい」などと、ご相談をしていただければと思います。

 

【最後に】

 腎臓病、特に腎臓のはたらきが低下している方にとって、血管保護は「転ばぬ先の杖」と言えることだと考えております。無理のない範囲で結構ですので、可能な方は実践していただけたらと思います。

 

医療法人陽蘭会 広瀬クリニック

廣瀬 弥幸

プロフィール等

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