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新型コロナウイルスと腎臓病

[2020.09.01]

 新型コロナウイルス感染症では、高齢者や、高血圧症・糖尿病・心血管疾患・慢性閉塞性肺疾患などの病気がある患者さんで重症化しやすいことが知られています。腎臓病をお持ちの方ではこれらの病気もある方が多くいらっしゃいます。また、腎臓のはたらきが低下している方では全身の抵抗力が弱く、肺炎や肺結核などの感染症が起きやすいと言われているため、新型コロナウイルス感染症についても十分な注意が必要です。

 ここでは、武漢でのデータ(1)から、新型コロナウイルスと腎臓病について書かせていただきます。数ある報告のうちの一つですし、海外の報告であり、日本の状況と比較してかなり重症の患者さんが多いデータですので、あくまでも参考とお考えください。

 

【武漢からの報告】

 新型コロナウイルスに感染して入院した、701症例の報告です。平均年齢は63歳で、男性が52.4%と、男性の方が女性よりやや多かったとのことです。入院の前からあった病気の種類と、その病気があった方の割合は、慢性腎臓病が2.0%、閉塞性肺疾患が1.9%、高血圧症が33.4%、糖尿病が14.3%、悪性腫瘍が4.6%でした。

 この報告では重症と判断された患者さんが42.4%と重症な集団であり、入院された701人の16.1%にあたる、113人が亡くなられています。

 

 腎臓については、元々慢性腎臓病があった方は2.0%でした。しかし、入院した時にたんぱく尿があった方が43.9%、血尿があった方が26.7%、推算式GFR(腎臓のはたらきを表す数字)が60 ml/min未満と下がっている方が13.1%おられました。

 入院時に腎臓のはたらきが低下していた患者さん(血清クレアチニンが上がっていた患者さん)では、そうでない患者さんと比較して、重症の患者さんの割合が高かったとのことです。また、急激に腎臓のはたらきが低下する「急性腎障害」が起きた割合も、死亡率も、入院時に腎臓のはたらきが下がっていた患者さんの方が高かったと報告されています。

 

入院時に腎臓のはたらきが
下がっていた患者さん

入院時に腎臓のはたらきが
正常だった患者さん

重症患者さんの割合

52.5%

40.7%

急性腎障害が起きた割合

11.9%

4.9%

死亡率

33.7%

13.2%

 また、入院した時にたんぱく尿や血尿のあった症例でも、その程度に応じて死亡率が高くなっていたとの結果でした。

 

【この報告から考える腎臓病での対策】

 重症な患者さんが多く含まれる武漢でのこの集団では、40%以上の方で腎臓に何らかの異常が出現し、急性腎障害となる方もおられました。また、そのような方では死亡率が高かったことが示されています。

 この結果と、腎臓のはたらきが低下している方では腎臓が悪くなりやすいことからすると、「腎臓病のある方は常に腎臓が悪くならないようにしておく」=「きちんといつも通りの治療を続ける」べきだと考えます。

 受診することが感染のリスクになる、という考え方もあります。しかし一方で、腎臓病では自覚症状があまりないため、血液検査や尿検査をしなければ病状がわからない場合が多いという特徴があります。受診をするかどうか、受診間隔を伸ばすかどうかということは、周囲の新型コロナウイルス感染症の流行の状況や、ご自身の腎臓病の病状などによって様々ですので、主治医の先生にご相談して決めていただきたいと思います。

 治療薬について、腎臓病ではステロイドや免疫抑制剤を使用する場合があります。これらの薬剤は感染症への抵抗力を弱める作用がありますので、ご心配なさっている方もおられることでしょう。しかし、そもそもそのような薬剤は必要だから使用されているわけですし、ご自分で調整なさるのは腎臓病の悪化につながる可能性もありますので、治療薬やその量については必ず主治医の先生とよくご相談いただき、適切な治療を継続してください。

 

 ここでは、腎臓病のない方でも、新型コロナウイルス感染症で腎臓に影響が出る方がおられることが示されています。腎臓病のない方でできる対策としては、健診を受けて腎臓病の早期発見・早期治療に努めること、高血圧症や糖尿病などのご病気をお持ちの方は日頃からきちんと治療しておくことなどが挙げられます。これらは新型コロナウイルス感染症以外の何らかの原因で腎臓が悪くなってしまわないためにも、重要なことです。

 

 新型コロナウイルス感染症によって腎臓が悪くなることを予防するには、当たり前ですが新型コロナウイルスに感染しないことが重要です。そのためには、手洗いやマスクの着用などの咳エチケット、3密を避けるなどの推進されている対策を粛々と続けることが大切です。また、まだまだ暑い時期が続きますので、熱中症や脱水による腎臓の悪化にもご注意ください(参考:熱中症と腎臓病)。

 

【最後に】

 ここでは腎臓の重要性をお伝えするために、死亡率や急性腎障害が起きた割合について高い数字が出ている報告をご紹介しましたので、驚かれたかもしれません。ここの報告は武漢での大変な時期のものですし、医療を含む様々な事情が異なりますし、重症患者さんが多い集団でのお話でしたので、日本の患者さんや医療の状況で同じことになるというわけではありません。

 日本腎臓学会のホームページでは、腎臓病のある方へのメッセージ(2)が発信されていますので、これもご参照いただき、過度に心配しすぎることなく適切に治療や感染対策をしていただけますと幸いです。

 

【参考資料】

(1) Kidney disease is associated with in-hospital death of patients with COVID-19. Kidney Int. 2020 May;97(5):829-838.

(2) 新型コロナウイルス感染症と腎臓病 - 患者さんとご家族にお伝えしたいこと. 日本腎臓学会

 

 

医療法人陽蘭会 広瀬クリニック

廣瀬 弥幸

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